こんにちは、toshiです。
今回は、認知症のスクリーニングテストとして使われるHDS-Rについて解説していきたいと思います。
HDS-Rとは?
HDS-Rというのは、改訂 長谷川式簡易知能評価スケールと言います。
大まかな認知機能の程度を把握し、認知症の有無をふるい分ける目的で用いられます。
長谷川式といわれるぐらいなので、日本で開発された検査ですが、世界的にはあまり使われていないため、国際比較には使えません。
また、質問に答えてもらう形式のため、手を使うようなことはありません。そのため、言語性の機能をはかることに長けています。逆に非言語性の機能、例えば、手の動きなどは図ることができません。
HDS-Rの構成
では、HDS-Rの構成を見ていきましょう。
・年齢 2歳までの誤差は〇
・日時の見当識 年月日・曜日
・場所の見当識 今いる場所の名前(自発的に言えば2点、ヒントありだと1点)
・3語即時再生 3つの単語を検査者が言ったとおりに言ってもらう
・連続7減算 ある数字から7を2回引いてもらう
・数字の逆唱 3桁、4桁の数字を逆から言ってもらう
・3語遅延再生 覚えた3つの単語を言ってもらう(自発的に言えば2点、ヒントあ
りだと1点)
・5物品呼称 5つの物品を見て覚え、そのあと言ってもらう
・語の流暢性 あるものについて言ってもらう(6個以上で1個につき1点ずつ加
算)
これらの9つから構成されています。
点数は30点満点で20点以下であれば、認知症を疑います。
結果の見方
基本的には、一般の人であれば満点とれるような検査になっています。
認知機能が落ちてきた場合、はじめに落ちてくるのは”見当識”と言われています。そのため、まずは、「年齢」、「日時の見当識」、「場所の見当識」が落ちていないか確認してみましょう
次に確認するのは、「3語遅延再生」のところ、ここが落ちてくると、短期記憶の能力低下が疑われます。アルツハイマー型認知症は、記憶にかかわるとされる海馬やその周辺の萎縮から始まると言われています。そのため、見当識に加えて、ここも落ちているとある程度萎縮が進行している可能性もあると考えてもいいでしょう。
ちなみに、前頭葉機能が落ちてくると、「連続7減算」、「数字の逆唱」なども難しくなってきます。これらは、アルツハイマー型認知症がかなり進行した場合でも失点は見られますが、前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症の可能性が考えられます。これらの場合、注意機能が落ちてくるため、記憶はある程度保たれているのに、集中が続かなかったり、話を聞けていなくて覚えていないということもあります。
また、年齢によっても望まれる得点は変わります。60~75歳ぐらいまでであれば、30点満点を想定することはありますが、80歳や90歳となってくると、そもそも老化していることから健常な方であっても30点満点をとれるということはあまりありません。高齢の方は30点満点じゃないからダメだとかそう思う必要はありません。ある程度の失点は自然なものでイコール病気ということではありません。
注意点
HDS-Rは、あくまでスクリーニングテストです。20点を下回ったから絶対に認知症だ、ということではありません。CTやMRIなどの脳画像検査や事前の情報、診察など総合的なものを見た上で医師が診断していきます。できなかったから認知症なんだということではないのでそこはご理解しておいていただきたいです。
また、ご家族のお気持ちの強さからか、変わりに答えをおっしゃる場合もあります。これでは、正確な得点が分かりません。言いたい気持ちは分かるのですが、ご本人のためにも、ぐっとこらえて見守っていただきたいところではあります。
まとめ
今回は、HDS-Rについて解説しました。
・HDS-Rは、改訂 長谷川式簡易知能評価スケールと言います
・認知症のスクリーニングテストとして用いられています
・9つの問題から構成され、30点満点で20点以下から認知症の疑いがあります
・見当識や短期記憶を測り、その問題の失点によって認知症の型を推測していきます
・80歳台や90歳台になってくると、健常な方であっても30点満点をとれないこともある
・あくまで認知症の疑いがあるかどうかをみる検査であって、これだけで認知症と診断できるものではない
・本人の力を正確に測るためにもご家族は静かに見守りましょう
以上がまとめです。参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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